字幕翻訳に挑戦!Vrewと仲良くなろう編

翻訳・ことば

PTCはいろいろな翻訳に挑戦していきたいという気持ちを一つの原動力として活動しています。
今回は「おさるのジョージ」の字幕翻訳に挑戦してみました!字幕の作成には何層ものプロセスが必要なことを改めて実感しました。そこで、このプロセスを記述すると面白いのでは?という考えのもと、本記事を書いています。

これからご紹介するプロセスは私たちが実際に行ったことの記録でもあります。こんなツールはこんなふうに使えるのか!と一つの参考になれば嬉しいです٩(^‿^)۶

字幕翻訳挑戦の経緯

字幕翻訳に挑戦したのは、「字幕と吹き替えは何が違うの?」という素朴な疑問からでした。

ご存知のように、字幕には文字数制限があるため意図を汲み取った簡潔な翻訳がされています。一方で、吹き替えでは、俳優さんの口の動きや声優さんが言いやすいかどうかなど…話し言葉として違和感のない翻訳がされているように思います。

字幕も吹き替えも同じ映像翻訳でありながら、意識すべき点が異なることは少なからず想像できます。実際にやってみて、はじめて感じることや気づくことがあるはず!と考え、このテーマを掲げました。

まずは字幕翻訳から取り組んでみました!
今回のテーマに関して様々な視点から記事を執筆していきますので、お楽しみいただければ幸いです☺️
(吹き替え翻訳に詳しいナカマ絶賛募集中☆)

全体のプロセス

今回の字幕翻訳が出来上がるまでには、ざっくり言うと、次のような6つのプロセスを踏みました。この記事では2についてご紹介します。後のプロセスは別の記事でお伝えしたいと思います。

  1. 動画の録画 
  2. 発話の書き起こし
  3. 字幕作成(リサーチ)
  4. 表示文字数の確認と表示時間調整
  5. 最終確認
  6. エクスポート

今回の動画は2人の間で共有するだけで公開の予定はないので、まずiphoneで画面録画しました。もし字幕をつけて動画を公開したいという場合は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスがついたコンテンツなどを使用しましょう☺︎

この記事では、2で使ったツールを中心に記述していきます。

2. 発話の書き起こし

字幕を作成するためには、当然ですが原発話を正しく理解する必要があります。音声だけで理解できるとしても、念のため文字で確認したいので、まず書き起こしから始めました。また、書き起こしがあると字幕の前に粗訳が作りやすくなると思います。

動画をツールにアップロード

まずは、プロセス1の録画をYouTube Studioに非公開でアップロードしてみましたが…

⚠︎失敗!YouTubeで文字起こしできない!

公式ヘルプサイトでは、表示できない原因がいくつか挙げられていますが、今回はどれにも当てはまりませんでした。おそらく、「おさるのジョージ」が著作権に引っかかってしまったことが原因だと考えています。

*文字起こしには時間がかかりますが、1週間経っても表示されないなどの場合は何か問題が発生していると考えた方が良さそうです。

Vrewに動画を再アップロード

Vrewは動画編集ソフトですが、発話の書き起こし機能も備わっています。自分で一語ずつ拾っていくことを思えば、Vrewを使用することで負担は軽減されたと思います。ちなみに、アプリ版もあるので、スマホで場所を選ばず作業できることはありがたいです。

Microsoftアカウント(有料)をお持ちの方なら、Microsoft Word onlineでも精度の高い書き起こしができるそうです!

Vrewの使用方法

では、ここからVrewの使用方法について簡単にご紹介していきます。プロジェクトの立ち上げ方からエクスポートまで4つのステップに分けています。

①対象の動画をa/bの方法でアップロード

a. [新しい動画で始める]→対象の動画を選択→[開く]
b. 対象の動画をトップ画面にドラッグ&ドロップ

a.
②言語の選択

アップロードした動画の言語を選択→[確認]

10分以下の動画だと1分程度で分析が完了します。早いですね〜
これでプロジェクトが立ち上がりました!

ちなみに、英語は14カ国*から選択できます。

*14ヵ国一覧
米国、アイルランド、イギリス、インド、オーストラリア、カナダ、ガーナ、ケニア、シンガポール、タンザニア、ナイジェリア、ニュージーランド 、フィリピン、南アフリカ共和国

③クリップの調整/書き起こしの修正

ここからがメインの作業となります。2段階に分けてご紹介していきます。

1. クリップの調整

書き起こしを細かく修正する前に、クリップ(下の画像参照)の区切りを修正するため、クリップの結合/分割を行いました。

1つのクリップは一度に表示する字幕です。例えば、クリップ1の字幕は、クリップ右側に表示されている0.00~5.57秒の間表示されます。そのため、1クリップで一つのセリフ(一文)が収まるように区切り方を調整していきました。一語だけ別のクリップとして独立していたり、不自然な区切り方がされていたりすることがあるので、そのような点を直します。

クリップ
上段(単語ごとに区切られている箇所)発話の書き起こし。自動認識できない音は[?]で示されている。←「クリップの調整」で修正するのはこちらです!
下段(青いマーカーが引かれている箇所)字幕として画面に表示される。上段の[?]を除いた書き起こしが反映されている。

次の方法でクリップの結合と分割を行い、1クリップで再生する発話の長さを調整しました。

  • 結合
    結合させたい箇所の前にカーソルを配置し、deleteキーを押すと結合されます。
    例えば、クリップ1にクリップ2も含めたい場合、クリップ2の先頭にある“My”の前にカーソルを置き、deleteキーを押せばOKです。
  • 分割
    1つのクリップに収まっていても、独立させたい箇所があれば、その単語や[?]などの前にカーソルを配置し、enterキーを押すと分割されます。

ちなみに、[ホーム]タブの[クリップを結合する/分割する]からでも可能です。shiftキーを押しながら対象となる語を選択し、[クリップを結合する/分割する]を押せばOKです。

ここでの注意点は、[?]などの一見不要な要素を安易に削除してしまわないことです。deleteキーで簡単に削除できてしまいますが、一つの要素を削除すると、なんと!その音が流れるシーンが動画から消えてしまうのです![?]にはBGMやフィラーなどが含まれているので、セミナーなどの動画編集には不要な沈黙や言い澱みなどを削除できるという点では効果的かもしれません。ただ、今回のようなアニメの場合は、[?]なども重要なシーンであることが多いので置いておくことをおすすめします。

2. 書き起こしの修正

書き起こしを修正していきますが、ここで修正するのは下段(青いマーカーが引かれている箇所)です。カーソルを修正したいクリップ内に持っていくと、そのクリップに含まれるセリフが再生されます。そこで、何度か音声を聞いて、下段の単語を修正していきます。これが字幕の原文となります。

④エクスポート

8種類ほどのファイル形式が選択できるので、目的に合った形式でエクスポートします。今回は、このあとの字幕の作成に必要なタイムコードなどの情報が含まれている「srtファイル」でエクスポートしました。

ここで、「txtファイル」でエクスポートしておくと、粗訳を作る際に便利かもしれません。txtファイルはタイムコードなどの情報を含まないため、書き起こしだけエクスポートできます。

【Vrewでエクスポート可能なファイル形式一覧】
.srt:字幕ファイル形式(通し番号+タイムコード+テキスト)
.txt:(人間が読むための)文字だけのファイル形式
.xml:異なるソフトウェア間でデータ交換が可能なファイル形式
.fcpxml:Final Cut Pro/ Davinchi Resolveなどに適応される動画ファイル形式
.mov:QuickTime用の動画や音声などのファイル形式(コンテナフォーマット*)
.mp3:音声データを圧縮する方式およびファイル形式
.mp4:動画や音声などを記録するためのファイル形式(コンテナフォーマット*)
.png:web上での使用を前提として開発された画像ファイル形式

*コンテナフォーマット:音声や映像といった複数種類のデータをまとめて格納することができるファイル形式

書き起こしが手に入ったので、Vrewともここでお別れです。Vrewの操作は簡単なので、私のようにテクノロジーには強くない…という方も手軽に使用できると思います。ご興味をお持ちの方はぜひ触ってみてください!

感想

今回ご紹介したプロセスは、字幕の作成がメインディッシュなら、前菜というイメージです。前菜といっても簡単にできるわけではなく、私はあまりテクノロジーに強い方ではないので、わからないことがあればその都度調べながら作業しています。これは準備段階だけに限った話ではなく、字幕を作成する時にはさらにたくさんのリサーチをします。こういったリサーチを含めた字幕の作成については、別の記事でご紹介させていただきたいと思います。

あらゆる点においてまだまだぎこちないのですが、のびしろをぐんぐん伸ばしていきたいと思っていますので、ご経験や知識を共有していただけると幸いです🌱🌱

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