字幕翻訳の下準備 ―Subtitle Edit―

翻訳・ことば

翻訳者の仕事って何でしょうか?

もちろんその名の通り翻訳が翻訳者の仕事ですが、それだけではないと思います。

たいていの翻訳者は、翻訳支援ツールを使いこなしていたり、複数の辞書を一つのソフトに集結させて使っていたりします。「PCスキル」って翻訳をするにあたって必須ですよね。

実際、翻訳の案件にかかわらせてもらい、言語能力だけではなくテクノロジーを使いこなせる力がないとやっていけないなぁと感じたことがあります。

本サイトでは駆け出し翻訳者二人が字幕翻訳の練習をするために行った準備やプロセスを、いくつかの記事にわけてちょこちょことお伝えしていこうと思います。

今回は、字幕翻訳に使えるツール『Subtitle Edit』をご紹介します!

ちなみに字幕翻訳をやってみようと決めてから、大体以下の6段階のプロセスを踏みました。

  1. 動画の録画 
  2. 発話の書き起こし
  3. 字幕作成(リサーチ)
  4. 表示文字数の確認と表示時間調整
  5. 最終確認
  6. エクスポート

Subtitle Edit は3、4のプロセスで使ったツールです。

本記事は『字幕翻訳に挑戦!Vrewと仲良くなろう編』の続編となります。書き起こしに使用したツールをご紹介しているのでぜひこちらもご覧ください(*‘∀‘)

Subtitle Edit とは?

「字幕作成ソフト」と検索すると必ず出てくるのがSubtitle Edit です。Windows、日本語対応のオープンソースのソフトです。

日本語の文字数のカウントが可能で、音声波形も表示されるのでかなり便利なツールだと思います。音声波形の情報は、主に字幕の表示を開始するタイミングを決めるのに役立ちます。表示終了のタイミングはある程度遅くても次のセリフに被っていない限りは許容できますが、セリフが聞こえるよりだいぶ前に字幕の表示が始まると不自然ですよね。

ちなみに、今回は使用しませんでしたがOCR にも対応していて、字幕が映像に埋め込まれた動画(DVD など)でもある程度機械的にその字幕の文字起こしができるというのもこのツールの目立った特徴かなと思います。

インターフェースはこんな感じです。

Ⅰ 動画ファイルとsrt (字幕)ファイルを開く

今回は用意してもらった動画ファイル(.mp4)と字幕ファイル(.srt)があったので、それぞれを開くところから始めました。

インターフェースが英語になっている場合は、[オプション]タブ → [言語の設定]ボタンから日本語を選択しておきます。

[ビデオ] タブ → [ビデオファイルを開く] でmp4 ファイルを開く

[ファイル] タブ → [開く(ビデオを維持する)] でsrt ファイルを開く

このとき、インターフェース下部に音声波形が表示されていない場合は
[ビデオ] タブ → [波形の表示/非表示の切り替え] から表示をオンにしておきましょう。

Ⅱ 一度に表示する文字数の上限を設定する

次に、一つのハコ(セグメント)に表示する文字数の上限を設定します。

今回は、従来の「字幕翻訳ルール」として広く知られている以下のルールを一切破らないように翻訳してみることにしました。

  • 1秒につき4文字まで
  • 1行につき13文字まで
  • 1つのハコ(セグメント)につき2行まで

[オプション] タブから [設定] を開きます。

[全般] のセクションにある、各行の最大文字数、1秒あたりの最大文字数、Max. number of lines を上のルールに沿って変更し、[OK] をクリックします。

Ⅲ 訳文を入力する

ついに翻訳を入力していく…その前に、Subtitle Edit の字幕編集部分の紹介をします。

動画ファイルと字幕(原文)ファイルを読み込んだ後に、ctrl+→ を押します。これで「テキスト」と「翻訳前のテキスト」が横並びで表示され、翻訳作業を進めやすくなります。

テキストを入力すると、①1秒あたりの文字数 ②各行の文字数 ③総文字数 が表示されます。行あたりの文字数まで示してもらえるのは助かります。

これすごく便利ですね。今回は、①の「文字/秒」が4を超えていたらアウトということです。

そして、Ⅱの手順で設定した1秒当たりの最大文字数4文字を超過した場合、①の表示が赤色になります(下図参照)。小数点も込みで計算・表示してくれるおかげで、次に説明する表示時間調整が細かくできることになり、かなりありがたいです。

文字数制限を超過した場合(4.17文字/秒)

Ⅳ 表示時間を調整する

上記「できたねぇ(文字/秒: 4.17)」のように、設定した文字数の上限を超過してしまった場合は大きく二つの対処法があると思います。

  1. そのハコ(セグメント)の表示時間を調整する
  2. 言葉の表現を変える

本記事では1 の過程の説明をします。2 についてはたくさん共有したいことがあるので改めて別の記事に書きます☺

このように、波形部分に「できたねぇ」のハコと次に出てくる「一晩でみんな…」のハコの境界があります。そして、この2つのセリフの間には空白の数秒があります。音声を聞いたら分かりますし、音声波形も小さくなっていますね。

これを見ると「あっこのハコ後ろにちょっと伸ばせる…( ̄ー+ ̄)」となります。そこで、カーソルを境界線に合わせて右にドラッグすると…

1秒当たりの文字数が3.93となり、4文字以内におさまりました☆

ドラッグでの微調整が煩わしい場合にはテキスト入力部分の左側に表示されている「表示時間」からも秒数を調整できます。

このように、ツール上で小数点以下も考慮した微調整を行うことができるのはとてもありがたいです。

豆知識①表示時間の一括調整

ちなみに、全部のハコまたは選択したハコの表示時間を一括で伸ばしたり縮めたりすることも可能です。私は字幕を作り始めてから、全体的にハコの後ろが長い(セリフが終わってからもしばらく字幕が表示される)と感じたため、一括で全ハコの表示時間を0.2 ~0.3 秒くらい縮めました。

[ツール] → [表示時間の調整] から行えます。

また、全部のハコまたは選択したハコの表示開始のタイミングも一括で変えられるようです。

豆知識②ショートカットキーの割り振り

[オプション] タブ → [設定] → [ショートカット] からショートカットキーの設定を行えます。

扱う動画や目的によって行う作業が違ってくると思いますが、よく使うコマンドを自分で設定するとかなり効率が上がりますね。

まだまだたくさん機能があるので、何かしたいことがある場合は他のツールに移行せずにまずツール内を探索してみる価値がありそうです!

最後に…

「翻訳」というと翻訳すること自体を連想しますが、少し大きく「サービスを提供する」という視点で考えると前後の色々な作業がありますよね。

その作業含めて請け負うことはなかったとしても、常にパソコンを使って仕事をする身として、知識があるに越したことはないと思っています。

どんなツールもどんな情報も簡単に手に入る時代なので、翻訳をより楽しむために積極的に翻訳周辺のことも学んでいきたいと思っています。

最後に、吹き替え翻訳全般について教えてくださる方やおすすめのサイト、動画などあればぜひ教えてください(*‘∀‘)

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