メタファーであそぶ 【番外編】

翻訳のあれこれ

今回の記事はメタファーであそぶ【メタファーの翻訳】の番外編です。
英語のメタファーを歌詞やセリフなどから見つけ、日本語訳をいっぱい考えてみよう!というアクティビティ(遊び)を行いました。その中での訳例やディスカッションなどを上記の記事にまとめています。アクティビティの詳細や大前提となるメタファーの定義については、そちらを読んでいただくことをおすすめします!

この記事では、ある映画に出てきた歌の歌詞に含まれるメタファーをどう解釈するかというディスカッションを紹介します。「ふ〜ん、こういうこと考えるひともいるんやなー」ぐらいの気分でお読みください。

題材は映画『Sing Street』の『GIRLS』という歌にあるメタファーです。


I shift my shape the way I change my colours


どんなイメージが沸きますか?
この映画を観たことがある方と観たことがない方では、浮かぶイメージは異なってくると思います。

今回のポイントは、
『メタファーの解釈は個々人の背景や考えにかなり影響される』ということです。
それが良いのか悪いのかはわかりません。良し悪しについても触れません。
ぜひ、皆さんも想像力を働かせてみてください😈

題材『Sing Street』

今回対象としたのは『Sing Street』という映画です。この映画のあらすじを簡単に紹介します。

シング・ストリート 未来へのうた[CD] - ヴァリアス・アーティスト - UNIVERSAL MUSIC JAPAN

-1985年。舞台は、大不況の真っ只中のアイルランドの首都ダブリン。主人公は14歳の少年コナー。不況の影響を受け、私立学校から公立学校に転校してきます。
その学校の不条理にも思えるほど厳しい校則やスクールカースト上層の学生からのいじめの洗礼を受けます。先生やいじめっ子に怒鳴られたり、殴られたり、家に居場所もなかったり、、、モヤモヤした日々を送っていました。
そんな中、美しい少女ラフィーナに出会い、恋に落ちます。彼女の気を引くために、コナーが始めたのがバンド活動でした。活動を通して、少しずつ自分を表現するようになります。たとえ、校則違反だといって、どんな仕打ちを受けようとも。その活動の集大成的なイベントとして、学校でライブをします。
その直後、ラフィーナと共に大きな決断をし、夢に向かって旅立つ-

といった内容です。

そのライブで歌った曲の一つが『GIRLS』という曲です。その曲の歌詞の一部の解釈に(ひとりで)白熱してしまいました。

『GIRLS』 歌詞

Girls – Sing Street

今回注目したのは、以下の部分です。

I shift my shape the way I change my colours 
Guess I’m a human work of art
(0:16-0:23)

皆さんならどのように訳しますか?

字義通りに訳すと、次のようになります。

自分の色を変えるように形も変わる
思うに 僕は人間の芸術作品なんだ

これを基に、いろんな訳を考えていこうぞ!という趣旨でした。特に、焦点はメタファーだったので、いろんな訳を考えたかったのは”I’m a human work of art” の部分だったのですが、意外にもその手前の歌詞で引っかかってしまったのです。

ディスカッション 会話形式でどうぞ!

解釈①-上記の字義通りの訳を前提に

色を変えるように」なん? 「ように」?

この”the way”は”as”と同じ使い方やん? 例えば、ブリジット・ジョーンズの日記で、マークが言うセリフの”as”と同じちゃう?

“I like you very much just as you are” 「ありのままの君が好きだ」
https://gifer.com/en/H4v3
昔、このセリフにキャーキャー言うてました(*´꒳`*)

そうか、文法の問題か。確かに、それはそうやな。
んー、、、でも、形を変えるアプローチと色を変えるアプローチって全然違うやん?
「ように」って、形と色を変えるアプローチが同質じゃないと繋がらへんと思うねんなー。

んー…そう?でも、この’colours’って「色」じゃなくて、『人柄・考え方』っていう風にも捉えられるんちゃうかなと思って。例えば、「性格」とかいう時に「その人の色」って言うこともあるやん。内面が変わると外見も変わることもあるしね。

なるほどね。確かに、’colours’自体も何かを喩えてるってことか。

解釈① ’colour’=人柄・思想説
‘colour’ /「色」には「人柄・思想」という意味があると、(意外にも)辞書には明記されていませんでした。
しかし、イディオム(慣用句)としては、英語でも日本語でもそのような意味で使用されます。
例えば、英語では、‘to show one’s true colours’ 「本性を表す」という意味になり、
つまり、'(true) colours’=「(本当の)性質」だと考えられていようです。
一方、日本語にも、「色に出ず」という慣用句があり、意味は「心の中の思いが表情や態度に現れる」ことです。日本語にも、「色」を用いて「思い」に触れる表現があることが確認できました。
そんなわけで、‘colours’=人柄・思想という解釈はもちろん妥当なわけです。

追記(2020年12月3日)
Merriam-Websterでは、‘colors’に「性格・性質」という意味があると明記されています。
翻訳者の松丸さとみさんが教えてくださいました!(Twitter
リサーチが不十分で失礼いたしました!ありがとうございます!!!

解釈②-原文との喧嘩勃発!

意味わからんこと言ってますね、すみません。もう少しお付き合いいただけたら幸いです。

解釈①は理解できるし、文法的にも正しいと思うんやけど、原文に納得がいかへんわ。

‘the way’は「ように」やと考えると、’colours’は「色(人柄・思想)」っていう風に捉えられると思うんやけど、どう思う?

色=人柄、内面、思想は納得してる。
もちろん、内面、性格とかが変わっていくと、見た目も変わることもあると思う。

でも、映画の中では、まず、服装とか髪型とか形を変えて、そのうちにどんどん自分を表現することに慣れて、メイクも始めだしてっていう変化があるねん。

形=服装・髪型、色=メイク

表現する手段を得ていったって感じに思ってる。自分という土台があって、髪型とか服装を変えたり、メイクをしたりして、装飾していくことができる=いろんな自分を表現できる→そんな自分がアートであるってことやと思ってるねん。

なるほどな。芸術とか好きやもんな。しかも、映画にも思い入れが強いしな。
そういう風に感じるんやな、おもろいな。(ありがとう(笑))

解釈② 形=服装・髪型、色=メイク説
素朴な少年が髪型やメイクによって、自分の個性を主張していく様に注目しています。
この流れを下の画像で見ると、解釈②は、「形を変える」に相当するのは第二形態、「色を変える」は第三形態のことを意味しています。そのため、順番的にも、形と色を変えるアプローチは異なると捉えています。

まとめ!

I shift my shape the way I change my colours” の解釈は2つ
*もちろん以下の2つの解釈だけが正しいというわけではなく、他にも様々な解釈ができると思います。
   ①色(思想・考え)が変わるように、形を変える
   ②形(髪型・服装)も変えるし、色も変える(メイクをする)

感想ですが、好きな映画とか何度も見てきた作品は、自分なりの思い入れができて、逆にそれが翻訳することの邪魔をしていると感じました。よく考えると、解釈①の方が文法的にも正しいと思うのですが、いち『Sing Street』ファンとして原文自体に納得がいかなかったのです。こんな気持ちの延長線上にファンサブがあるのかな、とか思ったりして。
以上のことから、メタファーの解釈は一通りではなく、何通りも存在するものだということを改めて認識できました。
すでに翻訳されているものでも、自分だったらどう訳すかな?と、皆さんもぜひ遊んでみてください!たのしいものですよ😏

Comments

タイトルとURLをコピーしました