性格を表す名前
こんにちは!
みなさんは英語の小説に出てくる登場人物の名前について、考えたことがありますか??
英語の本では、登場人物の名前そのものがその人の性格や行動を表す場合があります!
例えば今回私たちが翻訳の練習に使っている「チーズはどこへ消えた?(Johnson&Kadota, 2000)」の登場人物を以下に並べてみましょう。
- Sniff(スニフ)
- Scurry(スカリー)
- Hem(ヘム)
- Haw(ハウ)
ノンネイティブの私たちにはこの字面から何かを推測することは難しいですよね…
でも実は、この4つの単語には意味があるのです。「太郎」とか「花子」とかのようにただ名前を表す単語ではないのです。
まず、Sniff は「(…を)ふんふんかぐ」という意味があります。(ふんふんってWeblioさんかわいい…笑)Scurry は「あわてて(ちょこちょこ)走る」という意味です。
( https://ejje.weblio.jp/ )
そして実際小説の中でスニフがにおいをかいで、スカリーが先陣をきって走るという役割分担をしているんですよね。ヘムとハウに関しては、”hem and haw”で「口ごもる」という意味があります。このふたりは作中で、恐怖心に駆られてなかなか前に踏み出せないキャラクターなんです。
英語ネイティブの読者は、名前をみただけで登場人物の性格や性質をなんとなく読み取ることができますが、私たちノンネイティブには無理ですね…。
翻訳の難しさ
私なんかが翻訳者を語るのはまだまだ恐れ多いですが、翻訳者って原文の読者が抱く感覚を同じような感覚を、 目標文化(この場合、英語から日本語に訳しているので日本文化を指す)の読者にも抱かせたいという願いが少なからずあります(文章のジャンル、クライアントの要望などにもよるみたいですが…。その話は追々できたらと思います)。
つまりSniffと聞いて、「あっなんかコイツにおい嗅ぐの得意なんかな~?」とか、Scurryと聞いて「ちょこちょこ走ってんのかな~」とか翻訳版を読んでいる日本人にも思わせたいわけです。
そこで私たちもトライしてみました!
Sniff = クンクン Scurry = どんどん
例: 2匹のネズミ、クンクンとどんどんは単純な頭脳と鋭い本能を持ち合わせていた。 クンクンは鼻がよくきくので、チーズがあるだいたいの方向を探し当てる。そしてどんどんが先頭を切って走る。
どうですか…?「スニフとスカリー」というよりも、2匹の役割分担がわかるような気がします。
しかし私たちが「クンクンとどんどん」を最終版訳として保存していないのには理由があります。
- ヘムとハウも日本語にしようとしたが、もともと2つの単語で1つの意味を持つこともあり、良い日本語が見当たらない。すべての登場人物を同じ方法で訳さないと一貫性がなくなる
- 翻訳は原文ありきなので、あまりにも創作感の出てしまう訳にするのは勇気がいる
実はこの本、日本語への翻訳版が出版されているのですが、そこでも「スニフとスカリー」のまま翻訳されています(どのような意味があるのか特に意味はないのか、筆者にはわかりませんが…)。
翻訳者は、目標文化の読者にもネイティブが自然と感じ取れるような雰囲気を盛り込みたい、という思いはあるけれど、それは実際難しい場合もある…。
こういったことも、翻訳の難しさのひとつであるのかなー、と思ったりします。
余談: 「ジュディ・モードとなかまたち」を参考に
他にも、英語の本で意味のある単語を名前に使用している例があります。
「ジュディ・モードとなかまたち」というアメリカ人作家メーガン・マクドナルドさんの作品で、主人公ジュディの弟はStink(スティンク)といいます。なんと”stink”には「いやなにおいがする」という意味があります(笑)作中で、ジュディが弟のことをくさいと思っていることを示すシーンがしっかりとあります。(笑)
まとめ
どうでしたか?英語の小説などに出てくる登場人物の名前について、少しは楽しんで読んでもらえたでしょうか?
- 英語の小説などに出てくる名前にはその人物の性格や性質を表す単語が使われる場合がある
- 日本語の読者にもその名前の意味を汲み取ってもらうのはなかなか難しい
筆者らはいつもこんなことを考えてはお互いに持ち掛け、「せやなー」「うんうん」「わかるー」「楽しいなー」という会話をしています。
これからもふたりの間で出てきたトピックを、アーカイブがてらシェアしていきたいと思います!
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