この度、オカムラは社内通訳として初めてお世話になった半導体メーカーを退職し、通訳翻訳スキルを磨くべく新たな舞台に挑みます。そこで、約2年間で何を学んだのか?ということを一区切りがついた今まとめてみたいと思います。
担当業務
担当させていただいた業務は、大きく分けて以下の3つです。
・通訳(約7割)
社内や社外の人との会議に参加し、逐次通訳をしていました。最後の方は採用面接も任されることもありました。年に数回全社的な大きな会議があり、そこでは同時通訳をしていました。
・庶務(約2割)
社内システムを通じてあらゆる申請を行なったり、輸出業務に携わったりと広範囲に及ぶ業務でした。必要資材の発注準備や海外からの出張者の受け入れ準備なども行なっていました。
・翻訳(約1割)
会議の発表資料や報告書が多かったですが、採用面接に関わる際は履歴書の翻訳を任されることもありました。また、細かいことで言えば、海外拠点の社員とのチャットやメールなどの内容の確認も口頭レベルで行っていました。
2年間で学んだこと
私が入社した時はまだコロナ禍だったため最初の頃は在宅勤務が多かったですが、規制緩和に伴い、出社する機会が増えたことで様々な形で会議に参加することができました。そんな変化も学びを助長してくれたなぁ、なんて思います。「通訳者として」と「社会人として」のそれぞれの視点で学びを振り返ってみます。
通訳者として
まずは、通訳者という立場で学んだことを記述してみます。
- 半導体業界の用語・表現(日英)
様々な会議に参加したり工場内に入ったりしたおかげで、実際にどんな場面でどの表現が使われているのかを知ることができ、専門的な知識を身につけることができました。 - 多種多様な英語(発音・文法)
入社したての頃はシングリッシュに苦戦しました…(参考:はじめての社内通訳 すべてを失う1週間)。シングリッシュを克服したら、次は母語の訛りが強い人や独特な言い回しをする人などクセ強スピーカー(日本語でも!)が次々と現れました。例えば、日本人の方でたまにおられたのは、質問に対する答えに対しての前置きがすごく長くて結論になかなか辿り着かなかったり、考えていることを全て口に出してしまってどこが回答かはっきりさせなかったりする人です。しかも、そういう人に限ってオンライン会議で音声がマイクにほとんど乗っていないなんてこともあるので、そういう意図せぬ事態への対応スキルも問われることが多々ありました。そんなクセ強スピーカーには慣れるまで少し時間が必要でしたが、慣れてしまえば対応できるとわかりました。このような経験のおかげで、対応できる幅がグッと広がりました。 - 社内通訳者の広範的な役割
賛否両論ある内容かもしれませんが、通訳者がモデレーターのような役割を果たすべき時もあると学びました。もちろん会議体や参加者によりますが、あまり海外拠点の社員との会議に慣れていない方だと進め方や質問の意図がわからないということもあります。そんな時に、会議の流れとして次に必要な展開を提案したり、場合によっては背景知識を補足したりして、少しサポートさせてもらうことがありました。このような経験によって、社内通訳者として会議をスムーズに進める技術も向上させることができました。
また、同時通訳(英語→日本語)も大きな会議で何度か経験させていただきました。同時通訳では、逐次通訳とは異なり、スピーカーに発言を聞き直すことはできないため、たとえ内容が普段対応している内容とは異なり、聞き慣れない用語が飛び交ったとしても、即座に何か言葉を出さなければなりません。ましてやコンマ数秒の遅れが自分の首を絞めることになります。このように理解が曖昧な中で時間的制約を受けながら訳出することはなかなか大変でした…。これは伸びしろの一つです。全体を通してうまくいこうがいくまいが毎回反省の嵐でしたが、駆け出しの私にとっては本当にありがたい機会でした。同時通訳の前は何度もトイレに行くほど緊張することが多かったですが、それでも楽しく挑んでいました。
もう一つ追記したいのは、先輩通訳さんが何人かおられたので、色々な情報を交換したり、ご経験を聞かせてもらったりして、貴重な学びを共有していただけたことも私が成長する上で大きな一助となりました。
社会人として
次に、一社会人として学んだことも通訳者という立場にいるからこそ言いたいことでもあるので、ここで簡単に記述したいと思います。
仕事への姿勢
- あまり細かいことは気にしない
- なんでも一旦面白がる(厳しい状況も真剣に楽しむ)
- うまいこと人に頼る(効率良く仕事をこなすため)
通訳は以前の失敗を引きずると次はうまくいかないので、切り替えが大事になってきます。そういう意味でも、どんな場面でも楽しむゆとりを持っておくとうまくいくことが多い気がします。そして、ゆとりを持つためには効率良く仕事をこなす必要があるので、周りの人と協力しながら仕事を進めることがいかに重要かを実感しました。
人間関係
- 変に構える必要は無い(良い関係を築くこと)
- チームワークの多様性(例:和気あいあいと働くこともチームワーク、しっかり分業して無駄なく働くこともチームワーク)
通訳者は中立性を保たないといけないからあまり周りと馴れ合わない方が良いのかな?なんて思っている時期もありましたが、むしろ仲良くなった方が話者の性格や考え方がよくわかるので通訳しやすいと気づきました。しかも、誰でも親しい人と仕事をする方がやりやすいし楽しいですよね!当然のことですが、仕事の中で何を重視するかは人によって異なります。そのため、基本的にはお互いが気持ち良く働けるように気遣うことが自分にとっての居心地の良さに繋がると感じました。
半導体という業界
- ものづくりはロマン
実際に、この分野に少し足を突っ込んでみて、半導体とひとまとめにできないほど高い専門性が必要な分野だと改めて実感しました。だからこそ、技術者さんにはそれぞれのこだわりがあって、より良いものづくりがしたいと思うのです。理想の追求には代償がつきもので、何かにこだわればこだわるほど人との摩擦が生じたり、様々な制限が邪魔をしてきたりします。そういう意味では、通訳という立場上、苦しい場面も多々ありましたが、それも含め経験値を上げる機会になったと思います。2年間を振り返ってみて、ものづくりの核は確固たる信念のもとにどう理想に近づいていくか挑戦し続けることなのかなと思うようになりました。飽くなき探究心と向上心が輝く、ロマン溢れる業界でした。これこそまさに2年前には思いもしないことだったので、もしかすると一番の収穫かもしれません。
自分の強み
上記のようなことを学ばせてもらった上で、今の自分の強みを認識したいと思います。自己満足のメモのようなセクションになりますが、いただいたありがたいお言葉を振り返って、自己分析をやってみたいと思います。
- 適切なトーンで通訳してくれて助かった
- ニュアンスまで伝えてくれてすごいと思った
- 人当たりが良いので、通訳依頼がしやすかった
- 一緒に働けて楽しかった
- テキパキ仕事をこなしていて好印象だった
- 頼りにしていた
私の強みは、発話者の意図(感情)を汲み取り、ディフューザー的役割を果たすことのようです!実は、普段から良くも悪くも空気をマイルドにしてしまうので、PTCの相方であるRinaから「ディフューザー」とよく言われてきました。その力は使い所を間違えると何も意味を成さなくなるので、どう扱えば良いものか難しいものでした。でも、いただいた言葉からは、通訳としてその部分をうまく使えていたようだと感じ取れるので自信を持ちたいと思います。
一緒に働けて楽しかったって人としてすごく嬉しいですよね。心地良い人間関係を構築できていたのかなと思います。とはいえ、これはチームが良い人ばかりだったから実現できたことです。すごく人に恵まれた2年間でした。
余談:半導体業界の参考資料
余談になりますが、半導体業界に参入するぞ!という方に本の紹介をしたいと思います。他にも参考にした本やウェブサイト、動画はありますが、ここでは役に立ったと思う本を載せておきます。
- 「半導体」のことが一冊でまるごとわかる
- 今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい 電波の本
- ★半導体工場のすべて(イチオシ)
- はかる×わかる半導体 入門編 改訂版
- はかる×わかる半導体 半導体テスト技術者検定3級 問題集
ちなみに、私は「半導体技術者検定エレクトロニクス3級」を取得しました!どうせ勉強するなら形に残そうかなという精神で挑戦しました。半導体に興味がある方は、一見の価値があると思います!
まとめ
正直なところ、学びはここに書き切れないほどあります。大事なことを教えてくれた人や尊敬できる人もたくさんいて、私とってはとても貴重な2年間でした。社内通訳者として初めてお世話になった会社ということもあり、私はここでの経験や出会った人を一生忘れることはないと思います。これまでお世話になった方々や今この記事を読んでくれている皆さんにも感謝しています。これを機に通訳翻訳者としてのキャリアが第二章に突入します。今後ともよろしくお願いいたします☺️乞うご期待!!!
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